まかろに まかろにっく

らいふ いず まかろにっく

夢の話

「最終点検ですよ、っと」

僕は、何かを覆い隠すように何枚も重ねられたダンボールを、一枚ずつ丁寧にどかしていく。月も薄い雲に覆われた薄暗い夜の中で、それは真っ黒い一つの大きな箱のように見えていた。半分ほどどかしたところで、金属で出来た大きな円筒が現れた。全部は見えていないが、直径は1.2m、全長は5.28mある。

「まずは燃焼室からだな…」

円筒表面のネジを回し、外殻をはずす。さらにいくつかのネジや金属板をはずし、コードやプラグなどの点検を一つ一つ順番に行っていく。設計図を見ずとも、構造は全て頭の中に入っていた。なにせ一から十まで全部自分で作ったのだ。他人の協力は一切なし。10年前政府に規制されてから、自ら法を犯してまでロケット開発をしようという人間はほとんどいなくなってしまっていた。

「これで…よしっ」

トリムの微調整を終え、満足して再び外殻を取り付ける。いつの間にか晴れ上がった夜空では、大きな丸い月が手元を明るく照らしていた。お前は味方してくれてるのか…。そんなロマンチックな考えが頭をよぎり、自分が興奮しているのを自覚する。無理もない、いよいよ明日にはこいつを発射させるのだ。ダンボールの隙間から横に延びた発射台を見つめ、発射する瞬間に思いを馳せる。何度も夢に見てきた光景が、明日実現する。そう考えただけで、身体の内側から感情が爆発し今にも踊り出してしまいそうだ。

「そうだ、明日の天気を確認しないと!」

天候が悪ければいくらなんでも発射は出来ない。僕は自分の家へと駆け戻り、勢いよく玄関の扉を開けた。

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以上は、先日見た夢の内容です。分かりやすいように少し物語風にアレンジしていますが、設定や流れはほぼこんな感じでした。普段は全然夢を見ないのですが、夢の中でのワクワクドキドキ感が起きた後も少し続いてて非常に楽しかったです。こういう夢をたくさん見れたら楽しそうだなぁ、と思いました。特に最後の、打ち上げ前日に天気を確認する、という辺りがハチャメチャでとてもいい。いやそこは確認しとけよ、みたいなね。場当たり的過ぎるだろ、って。まぁでも、このしがらみだらけの世の中ではそんな行き当たりばったりなロケット打ち上げも良いのかな、って思いますよね。

…いや良くないですね。ロケットだし。絶対事故るもの。うん。